創立36周年記念講演「元防衛大臣 衆議院議員 岩屋 毅様」卓話内容を掲載しました(2021年4月20日)

創立36周年記念講演・例会(卓話)
元防衛大臣 衆議院議員 岩屋 毅様
「今後の我が国の安全保障上の課題」
創立記念36周年、誠におめでとうございます。このような機会に話を聞いていただけるチャンスを賜り大変光栄に思っております。私の父も大分県別府市で医師をしておりロータリアンでした。子供の頃は、ロータリークラブ主催の家族会に参加したことを思い出しております。三宅会長とはとある場所で出会い、それから20年のお付き合いををいただいております。
 今日は、大仰な題目ですが我が国が直面している様々な安全保障上の問題についてお話をさせていただきます。安全保障の話というとついついミリタリーな話ばかりになりますが、それではよろしくないと思っています。自民党の中では防衛大臣も務めたこともあり国防族とみられているわけですが、それは好きではなく安全保障はミリタリーはもちろん極めて重要なファクターではありますがそれだけではありません。外交、防衛、経済、文化交流、観光、様々なものが集まった総合戦略であると思っております。ミリタリーに特化していくと抑止力が大事で様々な総合的な取り組みによって作り上げていかなければいけないのですが、ミリタリーだけに特化した安保論は木を見て森を見ずになりかねないといつも考えております。これからの国際情勢がどうなるのか、言うまでもなく好むと好まざるとにかかわらず中戦冷戦といったような大きな潮流が始まっていると思います。お互いに競争するんだということを公言しているわけです。先般のアラスカでの米中外交首脳会談は第一ラウンドのゴングがなったところかな。と思っています。ただ、今度の冷戦はかつての米ソの冷戦とは全く中身が違っている。当時はマーケットが分かれておりましたし、共産圏の経済力はとりわけ見るべきものはなかったと。ソ連は軍事力は巨大だが経済的には見るべきものはなかった。結局包囲網を作られて自滅した。今回の冷戦は全く違い、中国の経済力はどんどん大きくなっている。次の世代のカギを握るといわれている最先端技術においてもまかり間違えれば追い越されるかもしれない状況にあるわけです。それと、世界のマーケットは一つになっているので、中国経済はしっかりと各国に組み込まれている。我が国にとっても最大の貿易相手国。米国にとってもそうでしょう。EUにとっても東南アジアにとっても。デカップリングはとてもできないぐらいにしっかりと世界経済の中に中国経済は組み込まれている。その中で米中の競争が始まったことだと思います。バイデン大統領はよく、民主主義対専制主義の戦いといわれますが簡単に二元論で片づけられるようなことではない。民主主義サミットをやるような上から目線の集まりを作っても幅広く世界の世論に訴えることはできない。もう少しスマートな戦略が必要ではないかと。中国は非常にストラティージックです。およそ人間が考え付く戦略、戦術というものは古代中国において全て考えつくされたといわれております。最初に一対一路と言い出しました。海に陸にも中国主導のシルクロードをつくろうと。この指止まれ!と世界200カ国中100カ国を超える国々がこの指に止まりました。銀行も作りお金も貸します、インフラ整備も手伝う!と言って世界中に投網をかけることをやってきました。最近はコロナ発祥の国でありましたが逆手にとって、まずはマスク外交、今はワクチン外。交我が国は中国のワクチンは承認していませんが既に70カ国にデリバリーしている。おそらく100カ国に到達するのではないかと。まさに影響力の拡大に余念がない状況です。米国もバイデン政権になってから矢継ぎ早に外交会談を積み重ねております。それが中国から見ると包囲網だといことになるんでしょうが、これを黙って指をくわえてみているだけではない。
先ずロシアと組み北朝鮮とも話をし王毅という中国外務大臣が中東に飛びイランとも話をし中東は王政の国々ですからその国々との連携を深めていく。つまり簡単に包囲網は作らせないという構えで対抗しています。二千四、五十年には軍事的にも経済的にも世界の第一等国、世界ナンバーワンになると習近平主席は目標に国家建設に余念がない。大事なことは、感染症、気候変動もそうですが本当は世界が分断する、対立するのではなく世界が英知を結集してこの地球課題に立ち向かわなければいけない。という局面に世界が冷戦で引き裂かれているのは消していいことではない。我が国はそのはざまにありどうふるまっていくべきか問われているんだと思います。我が国の立ち位置はいかにあるべきか。言うまでもなく、米国の同盟国で、民主主義国家、自由主義の国でございます。基本的人権を尊重している国ですので民主主義対専制主義と言われれば立ち位置は決まっているのですが、そこに立っているだけでは大きな課題に役割を果たすことは出来ないので、正に外交的にも難しい局面に差し掛かっています。中国は永遠の隣人ですのでできるだけ友好的な関係を保つに越したことはありません。先ほど申し上げたように、経済的にも大きく我々と結びついている。多くの企業も中国に行って仕事をしている。何よりも十数億のマーケットは日本経済にとっても大きな魅力です。がしかし今の中国なるものがこのままどんどん膨張しアジア全体を包んでしまう、世界を席巻してしまうということは決して我々にとっても世界にとっても好ましいことではない。例えばあくなき海洋進出。南シナ海を取り上げて軍事要塞化しているわけです。中国の主張は九段線があり古代中国から我々の支配下にある。と国際法ができる以前からそうであることをいっており、国際仲裁裁判所で九段線の無効とされても南シナ海では力ずくで続けている。今フィリピン沖に200隻の中国の船を持って行って何かを企んでいるのですが、そのようなことが東シナ海にも及んできて、尖閣諸島周辺は365日24時間我が海上保安庁が全力を尽くして海域を守っていますが、時折領海侵入を犯して漁船を追い回すとなど、力づくで現状変更する中国の姿勢は受け入れられません。それから債務の罠といわれますが、中国はどんどん発展途上国にお金を貸し返せなくなれば土壌を取り上げるなど、批判をすると対オーストラリアにやっているような輸入制限措置をかけてプレッシャーをかけるやり方を今もなおやっているわけです。それから最近では香港。ほとんど民主的な仕組みが破壊されつつある。破壊されている状況にありますし、新疆ウイグルは甚だしい人権侵害が行われているのではないかというふうに言われています。今超党派で我が国も人権問題を理由にして制裁をかける措置、この根拠になる法律が日本にはないものですからそれを持っておくべきではないか。という議員連盟が立ち上がり私もメンバーにはなりましたがただ、人権外交とはやはり気を付けなければいけないと思っています。まず、人権侵害があったことをよその国に頼らず事実認定ができるだけのインテリジェンスの力を持っていないといけない。米国が言っているから我々も制裁します。というわけにはいかない。日本は人権を尊重している国ではありますが、過去においてどうであったか。現在においても先進国の中でも最も難民の受け入れ数が少ないとか。あらを探そうと思えばいくらでもある。人権を振りかざしていくと必ず反発もリアクションも起こるということを踏まえていないといけない。最近の制裁は国家に対してではなく、人権侵害を犯している団体組織の人物に対して入国を拒否する国内にある資産を凍結する。といったようなやり方が主になってきているわけですが、ほとんどが報復を受けることになるとおもいます。そうなると我が国の国民我が国の企業に対して理由があるなしでも報復される恐れがある。となるので、リスク分析をしっかりして、リスクヘッジをどうするかを考えないと簡単に制裁をかけることは出来ない。ただ、そのツールを持って置くことが一つの外交手段になろうかと思います。持っておくのはいい。
発動については余程考えなければいけない。話が横道にそれましたが、いわゆる中国的なるものの膨張は国際社会が力を合わせていくべきです。この21世紀の中華主義膨張を防ぎつつでも、中国との対話は切らさない。いうべきことは言いながらも対話は続ける粘り強い姿勢が必要となっている。それでなくても我が国は周辺の国と難しい問題をたくさん抱えています。韓国は今もなお、従軍慰安婦の問題。竹島の問題。北朝鮮は拉致、核、ミサイルの問題が未解決のまま残されている。ロシアに対しては阿部元首相がプーチン大統領と二十数回にわたり会って話をしていたが残念ながら北方領土問題は前進できていない。この難しい周辺の国々との関係がありますが、これからの日米関係これからの日中関係をどうするか。が重要な柱でその関数で日韓関係あるいは北朝鮮、ロシアとの関係が、影響を全部受けるので中国とどう向き合うか最大の課題です。先ほども話しましたが中国は二千四、五十年までには世界ナンバーワンになるといっていますがやがて成熟した体制を持っていないと思うので、どこかで限界が来るんだ、国力のピークを迎えるます。中国も少子化、高齢化が進んでいくでしょうし、社会保障体制という意味で言うと我が国ほどと思います。れまで、中国との実際の紛争まかり間違えれば戦争ということが起こらないようにマネジメントしながらここを耐え忍んでゆく。やがて、中国も国際ルールにのっとって一緒にやってくれる日が来るまで粘り強い対応をしてゆくことが必要に思えます。何をやるべきなのは言うまでもなく、日米同盟をもっと強固にする。いよいよ菅総理が渡米し16日日米首脳会談が行われます。バイデン大統領になり初めての会談ですが、手放しで喜んではいられないと思います。やはり米国も相対的には国力が低迷している。同盟国との連携がなければ中国と向き合うのは難しい。アジアで最も頼りにすべきは日本であり、日本の総理に先に会って話をしなければならない。と米国ならではの戦略策略があるのではないかと。これから日本は何をしてくれるのかと、問われる首脳会談になるのではないかと思いますので最初に会ってくれるからありがとうとは済むような状況でもない。もう一つ大事なのは日米韓の連携、特に安全保障については韓国との連携が大事だと思います。我が国も米国の同盟国韓国も同盟国こちらには在日米軍があり向こうには在韓米軍がある。朝鮮半島で何か起こった場合はこの日米韓が連携しないことには対応できないわけです。したがって、難しい問題は多々ありますがそれはそれで外交の舞台で丁寧に話し合いを続けるということで。こと安全保障に関してはしっかりと日韓が組んでタイアップしておかなければと思います。私の時にレーダー照射事件がありました。日本の哨戒機に韓国の艦船がロックオンしました。私は自衛隊を信頼しているので韓国に抗議したところやったやらないの応酬が続きました。韓国の防衛大臣と一対一で話し、二度と日韓の間でこのようなことを起こさないと約束をしました。以降一切問題はない。そしてここにオーストラリアも入ってきてもらおう、インドも入ってもらおうと日米豪印、ちょうどひし形みたいになりますQUAD。4か国の会合が始まっております。それからフランス、イギリスもインド太平洋に領地をもっておりますので実はインド太平洋国家なんですね。フランスもこの輪の中に入ってイギリスも入って。それからドイツは、日本と同じ敗戦国であまり海外に軍を出すことに慎重だったんですが最近はドイツも艦船を派遣してインド太平洋で協同訓練をしています。ぜひヨーロッパEUもこの自由で開かれたインド太平洋の中に組み込んでいく。それから東南アジアの国々もアメリカと中国が対立して、引っ張り合いのマタサキに合うのは嫌だとそう思っていますが、しかしフィリピンにしろインドネシアにしろ実際に中国から領地を侵されてしているわけですから、中国のやり方はよくない。これはやめてもらわなければいけない。ということにおいては東南アジアの国々を含めて連携できると思います。
自由で開かれたインド太平洋。これは、阿部政権で作った言葉で FOIP(Free and Open Indo pacific )これは世界共通語になりつつあります。日本が構想したビジョンなんです。実際世界の人口の三分の二がこのインド太平洋に集まっている訳ですからこの構想をさらに推し進めていくことが必要です。
そして、そのインド太平洋の中に縦横斜十文字に自由貿易の輪を張り巡らせていくことも併せてやっていく必要もあるのではないかと思います。TPPはアメリカが言い出したがトランプ大統領になって一抜けたで抜けたままになっていますが、日本政府は頑張って残った国でTPPを作りました。最近はイギリスも入りたいといい、アメリカもぜひ戻ってもらう必要もあると思います。そこにすでに作っている日EUの自由貿易規定、日英、日米、RCEPだけは、中国が入っています。中国が入るためにほかの自由貿易協定に比べるとハードルが低くなっているわけですが、私は中国に最先端の国際ルールを守ってもらうためには、レベルの高い貿易協定の網を張り巡らせてそこに良かったら入ったらどうですか。排除する必要はないので、そういう戦略をとっていくべきではないのか。
 国は安倍政権になるまで、国家安全保障会議という会議体はなかったです。初めて司令塔を作りました。基本的には総理、副総理、官房長官、防衛大臣、外務大臣これが主たる国家安全保障会議のメンバーです。定期的に会議し国の安全保障の方針を作っていきます。安倍政権になってはじめてその仕組みができました。そこで国家安全保障戦略も初めて作りましたが、もうすぐこれを改訂しなければいけなくなっていますがつい最近その国家安全保障会議の事務局の中に経済班を作りました。今から先はこの経済安全保障をしっかりやらなければ国の安全保障はできない。ということで、今回コロナで問題になったサプライチェーンの問題ですとか、最先端の技術の保護、AI、量子コンピューターあるいは宇宙に関する技術とかIPSなどのそういった技術の保護。サプライチェーンが何か起こった時の紛争で断ち切られたりするとまさに経済が一気に停滞をしてしまう。なのでそれをどう作ればいいのかなどの問題を国家安全保障戦略の中にしっかりと書き込んでいく。この取り組みをしっかり進めながらこの中国との対話を切らさず粘り強くやっていくことが大事です。
身近な問題は、北朝鮮との問題があります。私も大臣時代わずか一年だったんですが8回ミサイルを打たれました。アメリカが衛星で見ているがこれをかいくぐるため朝方5時ごろに発射してくる。このミサイルの防衛をどうするか、と当時イージス艦だけでは足りず陸地にもイージスアショアを山口県と秋田県に配備願いを出しましたが、調査にミスがありお𠮟りを受け最終的には河野大臣が断念いたしました。そのシステムは船に積みイージス艦を増やして対応することになりました。その時に打たれたのを打ち返すだけではだめで、ミサイルを打っている敵の基地を攻撃するのがいいのではないかと、自民党内で侃々諤々の議論をしました。が私は反対をいたしました。我が国の政策として適切かと考えたときにこれは相手のテンションを余計に高めることになるのではないかと、私は思いました。実際それができるのかどうかといいますと、65年前の議論で決着が出ていました。当時の鳩山一郎政権、相手の攻撃を回避するのにほかに方法がない場合に相手の基地を攻撃するのは憲法上許されないわけではないと答弁が行われていました。歴代の内閣はこれを継承しています。ですので憲法上はできるが、これを大上段に掲げてやりだすと本当の脅威は北朝鮮だけではなく、中国ありロシアあり、それらの国々は北朝鮮とは比較にならないミサイル能力を持っていてそこの基地を全部つぶすとなれば防衛費は今の十倍あっても足りません。我々がその備えをすればするほど相手の能力も高まっていく悪循環になっていく。自衛隊も静かに能力を向上させています。
まもなく射程1000キロのミサイルが陸空海と備わっていくと思いますが、例えば福岡から平壌まで700キロ、対馬からだと600キロ、北京までは1300キロですが自衛隊はすでに衛星の能力を持っていますし偵察のための航空技術も持っています。万万が一ほかに手段がない場合は相手の基地にミサイルを発射する能力をまったくもっていないわけではありません。ミサイルの射程を伸ばしているのは敵の基地を攻撃するためではなく、日本の南西の島々だけでも千数百キロあるわけで日本の島々を守るために必要なのです。静かに実力を養えばいいのではないかと思っています。中国に対しては海警法(日本では海上保安庁)国際法に照らして明らかに違反と思われる法律を作りました。中国の管轄区域の中においては相手国の公船であっても武器は使用できるという法律です。その管轄区域はどこかというと九段線の中は管轄だという。極端に言えば台湾、尖閣諸島はもちろん沖縄も含めて言い出したら、これは国際法違反だとしっかり打ち鳴らし続けなければいけない。今現在は海上保安庁は中国の2倍の勢力で対応しています。もし海上保安庁だけで対応できなくなれば自衛隊に海上警備コードが下令されますし、それでも侵略されれば自衛権を発動してでも排除する固い決意を示し続けるのは抑止の意味でとても大事である。今度の日米首脳会談では、台湾海峡の件も非常にセンシティブな問題で、中国が一番敏感に反応する問題だと思いますが、ただ台湾は2300万の人口で自分達が法律を持っていて何も中国の支配下にあるわけではない。政治的な独立体、ここが力ずくで併合されることは、世界が許していいはずはないので、台湾の方々がどう考えるのかが一番大事です。拒否のデットラインは世界の世論として必要だと思います。
日本を取り巻く安全保障環境は大変厳しいんですけど、ここはまさに外交努力防衛の努力として経済連携の努力。様々な努力を行い何としてもこの地域で紛争が起きないように実際の軍事衝突など絶対に起きないよう、マネジメントをしていきながら我が国の平和を守りまた、アフターコロナで再度経済の発展を図っていくことが一番大事だと思っています。
いつ層の努力精進をしてまいりますので、今後ともご指導ご鞭撻を賜りまして終わらせていただきます。

                                                   以上。